連想マップとは,もともとは授業前後における学級等の学習者集団における学びの変化を把握するために,提示語から連想される語(回答語)について連想マップ処理アドインで処理を行い,視覚的に表現されたマップである。
(30秒間,提示語:トランジスタ) (30秒間,提示語:トランジスタ)
これらの連想マップは,1994年時点での中学校技術・家庭(技術分野)におけるトランジスタの働きに関する学習(中学2年生42名対象)の前後にとった連想調査結果をマップにしたものである。
マップの基本的な見方
<マップ上への回答語の配置>
・回答者数の多い回答語ほど,中心に近い位置に配置される。
・同一円周上の回答語は,回答者数が等しい。
・同一円周上の回答語は,五十音順に右回りに配置される。
・授業開始時のマップには,馴染みのない提示語ほど無反応や意味不明な回答語が表示されることが多い。
・知識提供型の授業では,教えた知識が授業終了時のマップ(事後マップ)の中心近くに表示されることが多い。
<エントロピの意味>
・ここでのエントロピは連想エントロピと呼び,提示語に対する連想の広がりの度合いを意味する。
・値が大きい(連想エントロピが大きい)ほど,集団の連想が特定の語に収束することなく広く連想されていることを意味する。
・授業前後におけるエントロピの小幅な変化では,連想の変化を読み取れない場合もある。そのため,エントロピの変化は,出てきた回答語の種類や配置の変化等と関係させて,その意味するところを慎重に読み取る必要がある。
<「無反応」の意味>
・回答語「無反応」は,回答欄が未記入の場合も無反応という反応であると捉え,「無反応」という語で表現したものを意味する。
<マップの解釈の例:提示語「トランジスタ」(上のマップ)>
◎授業開始時の連想マップ(プレマップ)
・中央付近が空いており,「トランジスタ」の提示語に対する集団共通のイメージが無い状態であることが分かる。
・回答語「無反応」が最も中心近くにあり,提示語から何も連想できなかった者が多かったことが分かる。
・中心に近い「ラジオ」はトランジスタ・ラジオを連想したこと,「電気」はトランジスタが電気に関係するものであることから電気を連想したことが読み取れる。
・「カタカナ」「6文字」は提示語について答えたものであること,「トランプ」「トランシーバ」「トライアングル」は音が似ている語を答えたものであることが読み取れる。
◎授業終了時の連想マップ(ポストマップ)
・中心近くに「エミッタ」「ベース」「コレクタ」の回答語があり,トランジスタの3本の足の名称が知識として獲得され,トランジスタと言えばエミッタ,ベース,コレクタのように,ほとんど同義語的に連想されたことが読み取れる。
・中央付近に「コレクタ電流」「ベース電流」「3つの足」「抵抗」「小さい」「黒い」「水位報知器」「基板」「電流」のトランジスタに直接関連する語が配置されており,授業内容が概ね理解されていることが読み取れる。なお,「小さい」「黒い」はトランジスタの大きさや色を答えた語であり,教師より提示された実物を見ての印象も読み取ることができる。
・エントロピが 4.405 → 3.943 と小さくなっており,「トランジスタ」に対する集団の連想が一定の語に収束したことが読み取れる。このことは,「トランジスタ」の語に対する連想が,授業前には広範囲に広がっていた(捉えどころが無く,バラバラな連想を抱かせていた)状態から授業後には関連する語に収束した(集団が同じような連想をするに至った)状態になったことを意味すると考えられる。
・最外周の語でも,トランジスタの学習と関連するものが多く含まれており,授業の内容が連想に反映していることが読み取れる。
・「カタカナ」「トラック」等の回答語は引き続き出現しており,学習とは必ずしも繋がらない意味の無い連想が継続することも読み取れる。
